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健康コラム
専門医が語る病気の知識

バレット食道・バレット食道癌(Barrett's esophagus・Barrett's esophageal cancer)

 食道は扁平上皮で覆われています。度重なる食道への胃酸逆流により、酸に弱い扁平上皮が酸に抵抗性の胃粘膜類似の円柱上皮に置き換わった状態を、その報告者の名前からバレット食道(Surgery 41;881-94:1957)と呼んでいます。バレット食道は胃から連続性に食道に延びています。3cm 以上のバレット食道をLSBE (Long Segment Barrett's Esophagus) 、3cm に満たないものを SSBE (Short Segment Barrett's Esophagus ) といい、内視鏡検査では10~20%の方にバレット食道が観察され、LSBE、SSBEの頻度はそれぞれ、0.4%、17.9%です。本来の食道癌は扁平上皮癌ですが、バレット食道由来の癌は胃癌と同じ腺癌です。年率発癌率はLSBEで0.33~0.56%、SSBEで0.19%であり、LSBEの方で発癌リスクが高くなります。日本胸部外科学会の2014年統計では食道扁平上皮癌に対する腺癌の比は100対8です。米国ではバレット食道癌の増加が著しく、1995年以降の食道癌における扁平上皮癌と腺癌の頻度が逆転しており、現在では食道癌の約6割を腺癌が占めています。

診断

 専門医による慎重で精密な内視鏡観察が行われないと、バレット食道内の早期癌を見逃す危険があります。通常内視鏡では発見困難なことも多く、色素内視鏡、拡大内視鏡、狭帯域光観察 (NBI, Narrow Band Imaging)等の高度な内視鏡技術が有効と考えられます(当院の内視鏡装置は最新のNBI対応です)。

症状

 無症状のことも多いですが、逆流性食道炎の症状が出現することもあります。

治療

 プロトンポンプ阻害剤によりバレット食道を退縮させる可能性があります。バレット食道癌の治療は通常の食道癌と同様に、可能なものは内視鏡治療、内視鏡治療困難なものには手術を施行します。

経過観察

 バレット食道からの発癌率はそれほど大きくはありませんが、バレット食道と診断された段階から定期的な専門医による内視鏡検査を受けることをお勧めします。