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健康コラム
専門医が語る病気の知識
胃食道逆流症と生活習慣の改善

 胃食道逆流症の治療の主体は薬物療法で、プロトンポンプ阻害薬(PPI)やヒスタミンH2 受容体拮抗薬(H2 RA)のような強力な胃酸分泌抑制薬を内服することです。また劇的な効果は期待できませんが、生活習慣の改善も有効のことがあります。

A. 食事、嗜好品

 胸やけ症状を誘発する食品,嗜好品を控えることが重要です。高脂肪食品(揚げ物、炒め物、バター、ケーキなど)、高浸透圧食品(菓子類、甘味食品、ケーキ、チョコレート、ココア)、酸性食品(柑橘類、トマト)、香辛料(唐辛子)、その他(炭酸飲料、アルコール飲料、喫煙)などがその主なものです。

B. 姿勢、体位

 食後1-2時間は横にならないようにし、 就寝時に上半身をやや挙上する体位をとることが推奨されます。腹圧が上がると逆流しやすい状態になります。重いものを持たない、 前屈みの姿勢を避ける、ベルトを強く締めない、排便時に力まない、肥満、便秘の解消、といった腹圧を減らすことが肝要です。

C. 併用薬

 薬剤の中には胃食道逆流症に悪影響を与えるものがあります。胃食道逆流症の治療をしているが、症状が改善しない時は、下記の薬剤が投与されていないかどうかを主治医に尋ねる必要があります。カルシウム拮抗薬、亜硝酸薬、テオフィリン、β-刺激薬、抗コリン薬、ベンゾジアゼピン系薬剤、プロゲステロン、プロスタグランジンなどは 下部食道括約筋圧を低下させます。また、非ステロイド系消炎鎮痛剤、ビスホスホネート系薬剤、カリウム製剤、抗生物質、などは食道粘膜に直接傷害を与えます。

 「 胃食道逆流症における生活習慣への介入(Lifestyle Intervention in Gastroesophageal Reflux Disease)」と題する最新の信頼できる医学論文(Clin Gastroenterol Hepatol 14;175-182:2016)では、「肥満で喫煙する胃食道逆流症患者には、体重減少および禁煙が推奨されるべきである。夜遅くの食事を避けること、就寝時に上半身を挙上することは、夜間の胃食道逆流症に有効である。」と結論しています。これは院長が会員である1897年設立の米国消化器病学会(American Gastroenterological Association) の公式雑誌の一つである臨床消化器病肝臓病学(Clinical Gastroenterology and Hepatology)に掲載されたものです。送られてきた雑誌の表紙を見て思わず感激してしまいました。表紙の写真を一目見ただけで、その論文の結論が想像できるからです。